Anker 556 はUSB4/Thunderbolt4対応のハブです。最近このハブを入手して40Gbpsライフを楽しんでいますが、ひとつある事が気になっていました。というのも自分のワークPCであるNUC13にAnker 556 を接続すると、WindowsをシャットダウンしてもAnker 556 の電源ランプが着いたままなのです。
これはNUCのThunderbolt仕様で、ユニットがシャットダウンしてもThunderboltデバイスには要求された電力を供給するように出来ています。Thunderboltデバイス配下のUSB機器についてはシャットダウン中の給電をBIOSで止める事ができます。しかしAnker 556 自身への給電を止める術がないため待機電力が気になりました。
色々と情報を探してみましたが、USB4デバイスがまだ市場に浸透していないことや、Ankerが詳細なデータシートを公開している様子も無いため、待機電力がどの程度なのかが全く分かりません。そこで、自分で測定してみることにしました。最初はPCの前にワットチェッカーを挟めば測定できるかなと思いましたが、もっと局所的で出費を最小限に抑えられないかと考えた末にこれを購入しました。
日本トラストテクノロジー USB4対応 TYPE-C 電力ディスプレイ(yodobashi.comで1,080円)です。この製品はUSB4対応のデータ転送もサポートしているため、内部は完全なパススルー結線になっています(のはずです)。つまり待機状態だけでなくOSにリンクしてUSB4ハブと認識された状態での電力も測定できますし、USBフラッシュやHDMIを使用している状態でもそれらの消費電力を含め測定できます。
さっそく測定してみます。まずはOSを起動してAnker 556 がUSB4ハブとして認識され、接続デバイスが何も無い「アイドリング状態」の電力を測定します。
精度はそれほど無いだろうという前提ではありますが、ブレ幅を平均するとアイドリング電力は概ね1.3W(電圧は5Vなので260mA)という結果でした。
次にOSをシャットダウンしたPC停止状態、つまり「待機電力」を測定します。
表示がVoltのままWattになりません。試しにスマホの充電に使ってみましたが充電終了した時も同じようにVoltのままになります。キャパシタで点灯しているのかと思いきや、USB4ケーブルを抜くと電源ランプは消灯するので給電はしているはずです。Wattの表示分解能は0.1なので、おそらくそれ以下ということになります。
LEDを点灯させるのに必要な電流は、物にもよりますが約20mAあれば良いらしいので、概ね 5V × 0.02A = 0.1W になります。本当に電源ランプのためだけに給電が継続しているようです。なぜそこまでランプの点灯にこだわるのかが分かりませんが、とにかく不必要最低限の消費電力ということです。
まとめるとAnker 556 自身の消費電力は以下のようになります。
- PCシャットダウン時の待機電力: 0.1W以下
- PC起動後のアイドリング電力:1.3W平均
総じてAnker 556 自身の消費電力はPCと繋ぎっぱでも電気料金を気にする程のものでは無いと言えます。しかし巷では大いなる勘違い情報が氾濫しています。それはAnker公式の以下のような記述に起因しています。
- USB Power Deliveryによる充電を行うためには100W出力に対応した急速充電器とケーブルをお使いください。この場合ハブ本体に15Wの給電を要するため、最大出力は85Wになります。
この記述から、Anker 556 は常に15Wを消費するという勘違いが生じているように思います。googleのAIでも消費電力は15Wという回答が出てきます。間違ってはいませんが常に15Wを消費している訳ではありません。
つまりAnker 556 はTDPが15Wの設計(全ポートをデバイスが埋めても15Wで運用できることを目指した設計)ということです。何も接続しなくても自身が常に15Wを消費している訳ではないのです。そもそもThunderbolt4互換のUSB4規格なら15W以上のバス電力を供給することが定められていますので、電力設計はそこに合わせてあるのでしょう。
アップストリームにPD給電する必要があるバッテリー駆動のPCやタブレットは別ですが、AC電源のPCならUSB4ケーブルを接続すれば(少なくとも15W以内は)外部給電はいらないのです。ただしPCによってはThunderbolt4互換USB4規格ではなくUSB4ネイティブ規格のものもあります。USB4ネイティブ規格のバス電力は7.5W以上と規定されていますので、Anker 556の接続デバイス数や消費電力によっては15Wの外部給電が必要になるものもあるでしょう。